COLUMN

中小企業の採用ミスマッチを防ぐ発信の考え方——良いことだけを書かない求人情報の作り方を解説します

中小企業が採用のミスマッチを防ぐための発信の考え方を整理します。良い面だけの発信が入社後のずれを生む理由、厳しさを書くときの線引き、募集要項に書ききれない情報の置き場所、発信で防げる範囲まで解説します。

公開日:

三沢裕樹

読了目安 約6分 SNS集客

石のテーブルに置かれた木の建物の模型が、窓からの光で片側は明るく照らされ、反対側は穏やかな影になっている様子
目次
  1. 01 早期離職が続くときに、最初に見直す場所
  2. 02 良い面だけの発信が、入社後のずれにつながる理由
  3. 03 募集情報の表示について、法律が定めていること
  4. 04 厳しさを書くときの線引き
  5. 05 募集要項に書ききれない情報の置き場所
  6. 06 応募前に会社の様子を伝えた、地域の屋根工事会社の例
  7. 07 発信で防げるミスマッチと、防げないミスマッチ
  8. 08 まとめ——良い面と厳しさを両方書く発信の要点
  9. 09 よくあるご質問

「求人媒体やSNSで発信を続けて応募は来るようになったのに、入社して数ヶ月で辞めてしまう」——中小企業の経営者の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。応募はあるのに定着しない場合、発信の中身が良い面に偏っていないかを確かめる価値があります。このコラムでは、採用のミスマッチを防ぐために、発信の中に何をどう書くかを整理します。

早期離職が続くときに、最初に見直す場所

早期離職の原因は、職場の人間関係や待遇など、いくつも考えられます。そのなかで会社の外からでも見直しやすいのが、応募の前に求職者が見ている情報です。求人票やSNSの投稿を並べて読み返すと、良い面だけで組み立てられているケースが少なくありません。

発信には、きれいな職場の写真や笑顔の社員紹介、「成長できる環境」という言葉が並んでいます。どれも事実で、丁寧に作られています。ただ、実際の仕事にある大変さや制約が、発信のどこにも出てこない状態になっていることがあります。

入社後に「思っていたのと違った」と感じるのは、会社が事実と違うことを書いたからとは限りません。発信で見せた面と、働き始めて経験する面のあいだに差があるだけで、ずれは生まれます。

良い面だけの発信が、入社後のずれにつながる理由

求職者は、応募する前に目にした情報から働く姿を思い描きます。発信に良い面しか映っていなければ、期待はその情報だけをもとにつくられます。忙しい時期の残業、慣れるまで続く地味な作業、体力的な負担といった部分は、入社してから初めて知ることになります。

大変な面は面接で口頭で伝えている、という会社も多いと思います。それも大切ですが、面接の場では求職者も緊張していて、条件や日程の話に意識が向いています。一度口頭で聞いただけの話は、入社を決めるころには印象が薄れていることがあります。応募前から繰り返し目に入る発信の中に書いておくほうが、判断の材料として残ります。

さらに、実際の働き方がそれほど厳しくない場合でも、事前に触れられていなかったというだけで、負担が大きく感じられることがあります。「聞いていなかった」という感覚そのものが、会社への不信につながりやすいからです。

募集情報の表示について、法律が定めていること

募集の発信は、法律とも関係があります。職業安定法第5条の4は、広告などで求人や労働者の募集に関する情報を出すときに、虚偽の表示や、誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。厚生労働省は、この決まりがSNSを使った募集にも当てはまると案内しています(厚生労働省「労働者の募集広告の表示について」)。

良い面を書くこと自体を禁じる決まりではありません。ただ、厚生労働省は、SNSで募集する場合も、募集主の氏名(名称)・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金の6項目を表示するよう案内しています。発信の中身を見直すときは、こうした基本の項目が投稿にそろっているかも、あわせて確認しておくと安心です。

厳しさを書くときの線引き

では、厳しい面をたくさん書けばよいかというと、そうとも限りません。厳しさばかりを並べると、今度は応募そのものが減ることがあります。分けて考えたいのは、変えられない実態を伝える書き方と、読み手を不安にさせるだけの書き方です。

  • 繁忙期の残業——「◯月から◯月は、月に◯時間ほど残業があります」と、時期と目安を書きます。「忙しいときもあります」だけでは、読み手は判断できません
  • 最初の数ヶ月の仕事——「最初の3ヶ月は先輩の補助が中心です」と、期間を区切って書きます
  • 体力的な負担——「重い資材を運ぶ作業があります」と事実を書き、会社として用意している道具や分担の仕方を添えます

共通しているのは、感想ではなく、期間・頻度・会社としての対処をセットで書くことです。「大変な時期もあります」で終えると、読み手は不安になるだけで、自分に合うかどうかを判断できません。いつ、どのくらい、会社がどう支えているかまで書いてあれば、求職者は自分の生活に当てはめて考えられます。

募集要項に書ききれない情報の置き場所

求人票や募集要項は書式が決まっていて、実態を細かく書き込む余地があまりありません。書ききれない部分は、SNSや採用ページの発信で補います。発信の始め方そのものは採用SNSの始め方のコラムで整理しているので、ここでは中身の組み立て方に絞ります。

  • 入社1〜3年目の社員インタビュー——「最初のうちに大変だったことは何ですか」という質問を必ず入れ、本人の言葉で答えてもらいます
  • 1日の流れを追った投稿——朝の準備から終業までを、見栄えのする場面だけを切り取らずに通しで見せます
  • 繁忙期と閑散期を分けた投稿——忙しい時期の現場と、落ち着いている時期の現場を両方見せます

投稿をつくる担当者は、どうしても見栄えのする瞬間を選びがちです。撮る前に、この投稿だけを見た人が入社後にどう感じるかを一度考える工程を挟むと、偏りに気づきやすくなります。建設や介護の現場で伝える内容は、採用SNSで伝える内容を業種別にまとめたコラムでも整理しています。

応募前に会社の様子を伝えた、地域の屋根工事会社の例

応募前の発信を増やしたことで、採用の状況が変わった例があります。私たちが伴走した地域の屋根工事会社では、事業が伸びるにつれて、仕事を担う人材の確保と定着が次の課題になりました。

そこで取り組んだのが、YouTubeやInstagramで社内の様子や働く人を少しずつ発信し、応募前に会社の雰囲気が伝わる接点をつくることでした。その結果、会社に合う人材からの応募が増え、離職率も改善しています。

この例は、厳しさを書くことの効果を確かめたものではありません。ただ、応募前に会社の様子を知る材料があると、求職者は自分に合うかどうかを先に判断しやすくなります。

発信で防げるミスマッチと、防げないミスマッチ

発信の見直しで防げるのは、情報が足りなかったために生まれるミスマッチです。仕事内容や職場の雰囲気、求められる体力や技術について事前に十分な情報があれば、応募の段階で「自分には合わなさそうだ」と気づいてもらえます。この段階で候補から外れることは、会社にとっても求職者にとっても悪いことではありません。

一方で、発信だけでは防げないミスマッチもあります。労働条件そのものに無理がある場合や、入社後の教育の体制が整っていない場合は、どれだけ正直に発信しても不満は残ります。発信は実態を正しく伝えることはできても、実態そのものを良くすることはできません。発信を見直しても離職が続くときは、受け入れの体制を見直す段階だと考えてください。

まとめ——良い面と厳しさを両方書く発信の要点

採用のミスマッチは、発信の中身を見直すことで減らせる部分があります。

  • 良い面だけの発信を見直す——期待が実態より高くなり、入社後のずれにつながります
  • 厳しさは具体的に書く——期間・頻度・会社としての対処をセットにし、感想だけで終えません
  • 書ききれない情報を発信で補う——社員インタビューや1日の流れの投稿で、実態を少しずつ足していきます
  • 防げる範囲を分けて考える——情報不足によるずれは防げますが、労働条件そのものの問題は発信では解決しません

今の発信が良い面に偏っていないか一緒に確認したい場合は、SNS採用支援のページもご覧ください。

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よくあるご質問

発信で厳しい面を書くと、応募が減ってしまいませんか?

応募の数は減るかもしれません。ただ、そのぶん入社してから「聞いていなかった」と感じて辞める人を減らせる見込みがあります。採用にかかる手間は、応募を受けてから面接、入社、教育まで続くので、応募の数だけでなく、定着までを通して比べてください。厳しさを書くときに期間や頻度、会社としての対処を添えておけば、不安をあおるだけの表現にはなりません。

自社の発信が「良いことだけ」になっているかどうかは、どう確認すればいいですか?

直近3ヶ月ほどの投稿や求人票の文章を並べて読み返し、大変な面や制約に触れている箇所が一つもないかを確認してみてください。社内の人がつくると、無意識に良い場面ばかりを選んでしまうことがよくあります。可能であれば、採用に関わっていない社員や社外の人に読んでもらい、この内容だけで入社後の様子が想像できるかを聞いてみると、偏りに気づきやすくなります。

これまで良いことばかりの発信を続けてきました。途中から内容を変えても大丈夫ですか?

大丈夫です。ただ、急に方向を変えると、これまでの発信を見てきた社員や求職者が戸惑うことがあります。まずは社員インタビューに「最初のうちに大変だったことは何ですか」という質問を一つ加えるなど、今の発信の形を保ったまま、少しずつ実態の話を混ぜていく進め方をおすすめします。

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