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「求人媒体に出しても、応募が来ない」——愛媛で採用のご相談を受けていると、この言葉から始まることがよくあります。掲載料を上げても、写真を差し替えても、反応が変わらない。そういう状態です。このコラムでは、媒体の使い方を改善する話ではなく、そもそも誰に向けて、どの道で届けるのかという手前の設計を整理します。
愛媛の採用は、県内で取り合う前提から見直します
まず、置かれている状況を数字で確認します。総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年結果)によると、愛媛県は2025年も転出超過が続き、2年連続で5,000人を超えました。転出超過率は全国でもっとも高い水準です。
さらに重いのは、その中身です。流出の中心は15〜19歳と20〜24歳、つまりこれから働き始める世代に偏っています。県内で採用したい若手のパイは、毎年細り続けているということになります。
この前提のまま「県内にいる人」だけを候補として奪い合うと、勝負は条件で決まります。給与、休日、知名度——どれも中小企業が大手に正面から勝ちにくい土俵です。
一方で、オンライン面接が当たり前になり、仕事の探し方も変わりました。採用の対象を、いま愛媛に住んでいる人に限る理由は、以前ほど強くありません。進学で県外に出たまま就職先を決めかねている人、結婚や親のことをきっかけに戻る時期を考えている人は、常に一定数います。その人たちから見つけてもらえる状態を作っておくと、母集団の広さそのものが変わります。
採りたい相手が違えば、届く道も違います
ここで整理しておきたいのは、採用手法に優劣はなく、届く相手が違うだけということです。
| 採りたい相手 | 向くチャネル | 理由 |
|---|---|---|
| 県外・潜在層 | SNS・YouTube | 転職を決める前の段階でも接触できます |
| 地元の学生 | 長期インターン | 受け入れ先が少なく、あること自体が理由になります |
| 地元の中途 | リファラル採用 | つながりが濃く、戻る検討を拾えます |
| 職種で探す層 | 求人媒体・ハローワーク | すでに探している人には今も確実に届きます |
誤解されやすいので先に書いておくと、これは媒体をやめる話ではありません。求人媒体は「もう探している人」に届く仕組みで、そこは今でも有効です。届かないのは「まだ探していない人」で、そこを埋めるのが残りの3つだと考えてください。媒体への掲載費が無駄なのではなく、媒体だけだと拾える範囲が構造的に決まっているということです。
県外の潜在層に届く道は、いまのところ発信しかありません
まだ転職を考えていない人は、求人サイトを見ていません。その人たちに会社の存在を知ってもらう入口は、現状ではSNSやYouTubeでの発信にほぼ限られます。
発信がどこまで届くかは、実際の数字で見たほうが早いです。和風建築を専門とする左官職人の発信では、施工の様子を追った動画が35万回以上再生されました。愛媛県の人口はおよそ125万人ですから、県の人口の4分の1を超える回数です。この再生が県内だけで起きていないことは、数字の大きさから分かります。発信は、意図しなくてもエリアの外へ出ていきます。
もうひとつ、地方の中小企業でこうした発信に本気で取り組んでいる会社は、まだそれほど多くありません。つまり続けること自体が差になる時期です。数年後には当たり前になっている可能性が高く、そのときには先に積み上げた分が効いてきます。
何を投稿すればいいかという具体は採用SNSの始め方に、建設や介護など業種ごとの手応えは愛媛の採用SNSにまとめています。この記事では、そこに入る前の「どのチャネルを選ぶか」に絞ります。
地元の学生には、受け皿としての長期インターンが要ります
地元での就職を考える学生から見ると、愛媛で長期インターンを受け入れている企業は選択肢がかなり限られます。都市部では受け入れ先が豊富にあるため学生は選ぶ側ですが、地方では逆で、募集していること自体が接点になります。
いきなり長期は重いので、1日だけの受け入れから接点を作り、そこから長期インターンやアルバイトへ移ってもらう流れが設計しやすい形です。学生側も、働く場所の空気を先に知ってから決められるので、入社後のずれが起きにくくなります。
受け入れる側で用意するものは、大がかりではありません。
任せる仕事を切り出しておきます——既存業務のうち、手順が決まっている部分を分けます。丸ごと任せられる仕事を探すと、いつまでも始まりません
社内の担当者を決めます——業務を教える人というより、困ったときに聞ける相手として置きます。ここが空席だと、学生は質問できずに終わります
期間と目的を先に伝えます——「何ができるようになる期間か」を最初に共有しておくと、途中で気まずくなりません
リファラルは、頼む前の土台で決まります
愛媛のように人のつながりが濃い地域では、社員紹介によるリファラル採用が働きやすい土壌があります。結婚や出産、親の介護といったきっかけで地元に戻ることを考えている人を、社内の人脈で拾えるのは、都市部にはない強みです。
ただし、朝礼で「誰かいい人いたら紹介して」と言うだけでは、まず動きません。理由ははっきりしていて、紹介する社員の側に、説明する材料がないからです。友人に自社を勧めるとき、社員は何かを見せて話します。そのとき見せられるものが何もないと、口頭で職場を説明する負担を全部その社員が背負うことになります。日頃から社内の様子を発信しておくことが、そのまま紹介のしやすさになります。
紹介してくれた社員に報いる仕組みを作る場合は、就業規則に定めて賃金として支給する形が一般的です。制度として整える前に、社会保険労務士など専門家に確認してください。
どのチャネルでも、最後に見られるのは「ここで暮らせるか」です
4つのどれを選んでも、最後に効いてくる共通項があります。その土地でどう暮らすのかが想像できるかです。
給与と仕事内容だけでは、遠方の人は動けません。休日をどう過ごすのか、通勤にどれくらいかかるのか、暮らしにいくら要るのか——このあたりが見えて、はじめて具体的に検討が始まります。地元の人には説明不要な部分ほど、外の人には抜け落ちて見えます。社員が休日に何をしているかといった、採用とは直接関係なさそうな情報が効くのはそのためです。
もうひとつ、県外に出ていく理由としてよく挙がるのが「地方には成長できる環境がない」という感覚です。ここは正面から向き合う価値があります。都市部に人が集まりやすいからこそ、地方では若手でも早い段階で裁量を持てるという見方が成り立つからです。実際、任される範囲の広さは中小企業のほうが圧倒的に大きくなります。これは待っていても伝わらないので、企業側から言葉にして出す必要があります。
採用の事例ではありませんが、麺や一心——愛媛県西予市のラーメン店では、10周年に合わせて店主の想いと10年間の物語を発信しました。条件や商品の説明ではなく、人となりが伝わったときに人が動く、という点は採用にも同じように当てはまります。
まとめ——採りたい相手を決めることが、チャネル選びです
採用がうまくいかないとき、原因が媒体の使い方にあるとは限りません。誰に届けたいのかが決まっていないまま、届く範囲の狭い道だけを使っている、という状態が多くあります。
前提を見直します——愛媛は2年連続で5,000人を超える転出超過で、流出は10代後半から20代前半に偏っています。県内だけで取り合う設計には限界があります
相手ごとに道を選びます——県外の潜在層には発信、地元の学生には長期インターン、地元の中途にはリファラル、すでに探している人には媒体と、役割を分けます
1つずつ始めます——4つを同時に立ち上げると続きません。採りたい相手がいちばんはっきりしているものから、半年単位で積み上げます
暮らしと裁量を言葉にします——仕事内容だけでは遠方の人は動けません。地元の人には説明不要な部分ほど、外に向けては書き出す必要があります
どのチャネルから手をつけるかは、社内の人数や今の忙しさによって現実的な答えが変わります。整理から一緒に考えたい場合は、採用SNS・採用サイト支援もご覧ください。
よくあるご質問
4つのチャネルを全部やる余力はありません。どれから始めればいいですか。
採りたい相手がいちばんはっきりしているものから始めてください。来春の新卒が要るなら長期インターンの受け入れ準備、今すぐ現場の人手が要るならリファラルの声かけ、数年かけて母集団を広げたいなら発信、という順です。4つは並列の選択肢であって、優先順位を決めずに全部に手を出すと、どれも中途半端になって続きません。1つを半年続けてから次を足すほうが、結果的に早く積み上がります。
長期インターンを受け入れたことがありません。何を準備すればいいですか。
任せる仕事の切り出しと、社内の担当者を決めることの2つです。学生に丸投げできる仕事はほとんどないので、既存業務のうち手順が決まっている部分を分けておきます。担当者は、業務を教える人ではなく、困ったときに聞ける相手として置いてください。まずは1日だけの受け入れから試すと、自社に受け入れる余地があるかどうかが具体的に分かります。
SNSで県外の方に知ってもらえても、移住まではハードルが高いのではないでしょうか。
全員に移住してもらう前提で考えると、たしかに難しくなります。実際に動きやすいのは、進学で県外に出たものの地元での就職も選択肢に入れている方や、結婚や親のことをきっかけに戻る時期を考えている方です。この層はもともと戻る理由を持っていて、戻ったときの働き先を知らないだけという状態にあります。ゼロから移住を促すのではなく、戻る理由がすでにある人に見つけてもらう、と考えるほうが現実的です。
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